室蘭市の中心部にほど近い場所建つ新築住宅です。
クライアントの生家を建て替えるにあたり、ご家族が大事にしていた庭を生かすことが求められました。
そのほか、吹抜けをつくらないこと、大型犬との生活を考慮した玄関やテラスを設けること、冬も暖かい家にすることなどの要望がありました。
道路側にはホテルや駐車場があり、車や人の往来が比較的多い一方、反対の庭側には雑多な「まちなか」にぽっかりと空いた心地よい空間がありました。
建ち並ぶ建物の間で、この庭と空への抜けは「生活の拠りどころ」となっていたようでした。
与条件をふまえ、設計する空間のポイントを以下のように設定しました。
・家のどこにいても庭や空の存在が感じられること
・街の喧騒から庭の平穏への切り替え、移り変わりを感じられること
長年この土地で暮らしてきたクライアントご家族にとって、庭との関係は日常として溶け込んでいるものです。
建築空間として庭との関係を考える際、「強すぎないこと」や「抑制された関係性」が必要であると考えました。
そこで、天井だけで空間のベクトルや外部との関係を表現することとしました。
玄関からLDK、テラス、庭へと続く北南の動線では、街と庭を結ぶように天井がV字に張られ、さりげない心の切り替えを表現しました。
庭側の居室は、敷地の周辺状況に合わせて天井の勾配と向きを変え、「庭とともに暮らしている感覚」を増幅しています。
設計期間中に今までになかったほどの急激な物価上昇・建設コスト増加の影響が直撃しました。
困難な状況の中でも、クライアント・施工の(有)協和ハウスさん・髙橋佑介建築デザインの3者が協力し、歩み寄りながら「予算内でできる最良の家をつくる」という目標を共有し続けられたことは、大変ありがたいものでした。
高気密・高断熱住宅の快適性と、旧家から引き継がれた敷地の持つ魅力をさらに感じながら暮らしてもらえたら嬉しい限りです。