敷地は手稲山から続く丘の東端に位置し、宮丘公園と上手稲神社の森に囲まれています。
クライアントの希望であった交通利便性と強固な地盤、豊かな自然環境を兼ね備えた土地を探し続け、この敷地に出会った時から、敷地の魅力を可能な限り活かす建築にしたいと思っていました。
同時に、「建築の地域性」「住宅の地域性」についてこの住宅の設計で改めて考えながら設計しました。 (「宮丘公園の家 – 地域性について考える」)
この先「建築の地域性」はどのような形で存在し得るのか。
現代の住宅や街並みにも、将来「文化」が宿る余地をつくりたい。
そのような問題意識の中、「宮丘公園の介壁」は、変化する人間の生活・生業との関係に頼らず、敷地との強固な関係で成り立つ建築を目指しました。
家の中央を東西に走る「介壁」は、敷地と建物の関係を取り持つものであり、同時に空間の質を変化させる境目の役割を担っています。
この壁は手稲山から続く尾根の方向、敷地から見える森の景色の方向に角度を振って建っており、敷地の地勢と周辺環境から導き出された、この場所特有の意味を帯びています。
この角度が「介壁」のこちら側と向こう側で光の移ろい方や森の見え方を変化させ、多様な場を生み出します。
「ここで寝よう。」
「向こう側が食事をするのに良さそうだ。」
「この辺りで暖をとりながら揺らめく炎を見て、本を読もう。」
その場所に存在する繊細な差異や特徴を丁寧に読み取って暮らす様は、お花見で敷物を広げる場所を選んだり、キャンプでテントを張る場所を探したりする時と似ています。
敷地と建築空間が互いの魅力を引き出しあって存在し、それに気づいた人がそれぞれの豊かさを見つけていく。
その住まい方を見て、地域が持っている魅力に気づく人が増えていく。
その積み重ねが、将来結果的に地域性や文化として現れるのだと思います。
この住宅がその一端を担えたら嬉しいです。