室蘭ではかつて体感したことのないくらいの、長くて暑すぎる夏がようやく過ぎ去りました。
毎週打ち合わせや監理のため、室蘭だけでなく札幌や小樽、北広島など、暑さに耐えながら駆け抜けた猛暑でした。
ジャガイモやビートの畑を横目に走っていたのがつい先日のように思うのですが、今はすっかり収穫の時期…
いつもながら、あっという間に時が過ぎていきます。
(Works も久々に更新できました。『中島の庭と天井』も追加しましたので、ぜひご覧下さい。)
世の中は物価上昇や建設コストの増加が長く続いています。
増加の度合いはようやく最近緩やかになってきたという話も耳にしますが、設計の仕事では(個人的な感覚としては)かつて体感したことがないほど、減額調整や設計変更を余儀なくされています。
建設費は、上がるのは一瞬ですが、下げるのはなかなか容易ではありません。
人間が使う上で最小限必要な床面積というのもありますし、コンクリートや鉄筋、木材など、構造材をはじめとして必ず使用しなければならない(削れない)材料や工事があります。
その部分の価格上昇をどのように吸収するかというのは、非常に頭を悩ませる部分です。
「予算が合わないから、新居を諦めようか」
「自分たちの理想を叶えた家にしたかったけれど、注文住宅は高いから建売住宅で我慢しようか」
「建て替えを考えたいけれど、建設費が上がっているから今は様子を見ようか」
そんな風にお考えの方が増えているのではないかと思います。
このような状況は、実は私たち設計事務所としては腕が鳴るところで、「何か役に立てることがあるはず」と強く思うところです。
予算内でできる最良の建築を創造することや、設計の工夫で「クライアントのためのオリジナルな理想の叶え方」を考案することをいつも考えているからだと思います。
施主と建設会社の間に立って、質を落とさずに建設費を予算内に納める方法を考えたり、建設会社の見積をチェックして減額の余地がないか精査しつつ設計の再検討をしたりすることも、設計事務所の日常的な仕事です。
中古住宅等のリノベーションによって、新築より予算を抑えて理想の空間を手にすることも、設計事務所の「設計の自由度」が役立ちます。
日々の生活のベースとなる住宅や職場の環境は、人生の幸福感や豊かさに直結しています。
子育てや幼児教育をはじめ、教育と建築を専門とする私たちとしては、子どもの成長にとっても住空間の影響が非常に大きいことも重要視しています。
大都市でも地方都市でも、現代に暮らす人々の「幸福感」が生まれるチャンスが減る状況は、とても淋しいことです。
物価や建設費は、一度上がると後で下がることは考えにくい傾向にあります。
計画を先延ばしにしても、(金銭的ではなく)生活の「豊かさ」は遠のくばかりになってしまいます。
室蘭をはじめ、胆振地方では「建築設計事務所に相談する」という選択肢がまだまだ認知されていないように思います。
予算が潤沢にある人だけ、大都市圏に住む人々だけが設計事務所を使っているのではなく、「予算内でより良い空間を」とお考えの方であれば誰でも設計事務所と一緒に計画を進めるのが最適だと思います。
住宅も含めて、都市により良い建築空間が増えることは、都市が豊かになることにつながっています。
昨今の状況を考える度にますます、一人でも多くの人に質の高い、自然とともに暮らす生活空間の素晴らしさを感じてほしいという思いが強くなります。