肌寒く、あまり天気の良くない日が続いていましたが、昨日に続き今日も朝からとても好天に恵まれています。

所用のため室蘭工大へ訪れた際に久々に「One Roof」の藤が気になり、見に行ってみると...

なんと、立派なつぼみが6つほど育っていました!

若葉もたくさんついていて、とても元気に成長していることがうかがえます。

造園業者さんが「藤は強いからね!」とおっしゃっていたことを改めて思い出しましたが、植樹され一年めから藤房が見られるとは思いませんでした。

現代建築の三大巨匠のひとりとも言われている建築家のフランク・ロイド・ライトは「organic architecture (有機的建築)」の追求の中で数多くの植物や巻貝等の生物の観察を行なったり、スケッチを残したりしています。

自然環境が生み出すものには「曲線」や「螺旋形状」が見られますが、彼はそれらを建築に取り込むことを模索していました。

そんなことを思い出させてくれる「螺旋形状」が、若葉にもきれいに表れています。

大学構内は桜もツツジも美しい花を咲かせており、写真を撮りに来ている方もいらっしゃいました。

「緑のアーチ」が完成するのはまだまだ先ですが、「建築に時間を織り込む」ことの楽しさや豊かさが感じられる、春の陽気です。

 

室蘭工大の学生だった時から考え続けていることですが、建築は「媒質」なのだと思っています。

媒質とは「ある作用が他の場所に伝わるための仲立ちになる物質や空間」を指す言葉で、媒質の性質によって作用の伝わり方が変わります。

(音の伝わり方が空気中と水中で異なることは、その一例)

例外もありますが、基本的に建築物は一度建てると簡単に動かしたり、形を変えたりすることができませんから、建築自体が変化するというのは苦手であるという特徴があると思います。

その前提の上で、建築を使う人が日々豊かな変化を感じながら生きるためには、建築が周囲の変化を人々に伝える「媒質」としてどのように存在するかが大切になると思うのです。

私たちが風景や街並、土地の歴史を大切に建築を考えるのは、それらが「媒質」としての建築を通って人々に伝わるからであり、周囲の環境にこそ最適な「媒質」を見出すためのヒントが隠れているからです。

「One Roof」は、住宅などに比べると非常にシンプルなので、「変わらない媒質としてのアーチ」と「変化(成長)する藤」、「それを見る学生や地域の人々」という関係もシンプルでわかりやすいのかもしれません。

 

大学を後にしつつ、高圧線下の満開の桜を見ながら、これからも「媒質としての建築」という視点を持ちながら設計をしていきたいと考える快晴の朝でした。