「緊急事態」が日常になりつつある昨今、振り返ればこの1年半あまり、私事での外出は以前よりゼロに近いほどに減っていると感じます。
何が「不要不急」なのか、考えることも多くなりました。
建築の設計をしていて、絶対に欠かせないことは、現地に足を運ぶことです。
そこにしか存在しない固有の「敷地」に建築を創るためには、その場に行ってあらゆる情報を得ることは言うまでもなく必須です。
そして、直接お会いしてお話することで伝わるニュアンスだったり、実物サンプルでしかわからない感覚だったりがある以上、打ち合わせもゼロにはできません。
自然に手を加え、自然環境にもクライアントの将来にも影響を与える仕事だからこそ、敷地調査と打ち合わせは建築設計になくてはならない要素です。
先日、室蘭から小樽へ向かいました。
「緊急事態」で高速道路割引がなくなっている(結構痛手…)こともあり、豊浦 – 真狩 – キロロ – 毛無峠 を経て小樽へ。
雲が掛かっていない羊蹄山に久々に出会えました。
成層火山の造形美も素晴らしいのですが、麓のよく手入れされた田畑の美しさは本当に素晴らしい風景です。
適度に人の手が加えられた自然の素晴らしさを改めて感じました。
一方、こちらも打ち合わせで久々に訪れた室蘭工業大学。
着々と成長している木の姿を確認できました。
『One Roof』の藤の木です。
アーチの半分を越えるまでにつるが伸びてきました。
植樹時より幹も随分太くなり、時期になるとたくさんの花がアーチから垂れ下がります。
緑に侵食されていく『One Roof』も、人間が時折つるを誘引するという、適度な手の加え方によって成立します。
適度に人の手が加えられた自然の美しさは誰もが感じるところだと思いますが、この「適度に」というのが非常に曖昧で、個人差がとても大きく出るところだと思います。
「独り善がりにならず、自然環境に対して謙虚に設計するようにしなさい」と、羊蹄山や藤の木から言われているように感じる晩夏でした。