– from Staff Y.Takahashi –
三月といえば、別れと出逢いの季節。
幼い頃から進級・進学のため、教員時代には、クラスの子たちや同僚・先輩の先生方と別れと出逢いを繰り返してきました。
そう考えると、誰しもが同じような経験をされているのかもしれませんが、今までたくさんの人たちと別れや出逢いを経験してきたように思います。
さて、昨年はご縁があり、札幌Kitaraホールで長年ピアノ調律をされているT氏と出逢いました。
Kitaraの調律師さんは複数いらっしゃるそうですが、なんと皆さんT氏のお弟子さんとのこと。
経験も実力もこの上なくお有りなのに、
「実力はまだまだ。これでおしまいということはない。まだ頑張って実力をつけていかなければ。」
と謙虚に話して下さいました。
小学5年生の時、札幌でYAMAHAのコンサートに出演することになり、大舞台に合わせた音の響きが欲しくてグランドピアノを懇願しました。
反対した父を説き伏して、母と父方の祖母が協力してグランドピアノを用意してくれました。
家にグランドピアノが搬入され感動した日のことを、30年経った今でも昨日のことのように覚えています。
北海道教育大学の音楽科にピアノ専攻推薦で入学できたのも、このピアノのお陰です。
30年前に宝物となったピアノは、今では娘の宝物にもなっています。
T氏は調律時、ピアノの音色をまずは試聴。
そして、今まで一度もされていなかった、88鍵のハンマーの一つ一つに薬剤をつけて下さり、この音色を可能な限り持続できるようにして下さいました。
古くなったから音色が悪くなるのではなく、悪くならないように保持させていくことが大切。
「音の調整とピアノを売ることだけが調律師の役目じゃない」
と仰るT氏のお名刺には、
– 技術は心 –
と書かれていました。
T氏の細やかな所作、心の暖かさに触れ、感動した日を思い出しました。
今月末にT氏と再会できそうで、今から待ち遠しく思っているところです。
アップデートされるピアノの音色がどの様に変わるのか…
私も娘も、そして、ピアノも、
T氏との再開が楽しみでなりません。
別れと出逢いの季節の3月は、心が揺れ動く瞬間がたくさんあると思います。
人との出逢いやご縁に感謝しつつ、
いつも純粋な心で人の心に触れて感動し、
人のために心を尽くせる人間でありたいと改めて肝に銘じました。