今月の上旬、突然手紙が届きました。
とても丁寧な字で書かれた手紙の主は、数年前の日本工学院北海道専門学校の卒業生。
非常勤講師の授業を一生懸命受けて、数年後までその時の言葉を覚えていてくれて、手紙をくれた。
その事実に、本当に講師をしていて良かったなと感動したと同時に、教育はやはりかけがえのないものだなと再認識しました。
「設計事務所ではどんな仕事をしているのか知りたい」
「実際にどのような空間がつくられるのか体感したい」
ということで、先日遠路遥々室蘭まで訪ねてきてくれました。
wine & cafe Adagio (お店HPはこちら)で昼食をとりながら店内を見てもらったり、高砂の囲間でお話をしたり、とても嬉しい時間となりました。
無の状態から創造した空間が実際に建ち上がり、人々に体感してもらえる喜びは、カタチとして残る建築(物)の大きな魅力のひとつです。
昔、中学校教育の世界から建築の世界に飛び込もうと決めた時には、「カタチに残るもの」として建築に魅力を感じていたように思います。
授業はカタチを伴わないナマモノで、そこに大きな魅力とやりがいがありますが、建築はそれとは対極にあるもののように感じていたのかもしれません。
しかし今改めて考えると、実際に建築空間に身を置き感じてほしいもの、理解してもらえて嬉しいものは、カタチそれ自体ではなく、「カタチによって生まれるカタチのないもの」です。
ある意味対極と思っていた教育と建築。それぞれの魅力は、実はそれほど遠いものではなかったのかもしれません。
一生懸命に生み出した「カタチのないもの」は、いつか誰かに伝わって残っていくもので、それにこそ価値があるのだと再認識できた出来事でした。
2022年も今日で終わり。
相次ぐ建築材料の値上げで、金額調整に多くの時間を費やしたり、何度も設計内容の見直しが生じたり、なかなか難の多い一年となりました。
クライアントの皆様のご理解や工務店・建設会社さんのご協力が、格別にありがたい一年でもありました。
お世話になった方々、ありがとうございました。
2023年もよろしくお願いいたします。